「従業員エンゲージメント」を左右する‘心を奮い立たせる’リーダーシップ

ガッツポーズするビジネスウーマンとビジネスマン米国には、次のような言葉があります。

「人は会社で入り、上司で辞める」

People join companies but leave managers.

すなわち、人は基本的に「この会社は良さそうだな!」と感じて入社を決めますが、直属の上司に失望して会社を辞めることが多いということを意味しています。

私自身の経験に照らしても、上司との考え方、方向性の違いや、相性の悪さなどが、退職を決める最も大きな要因のひとつだったように思います。(ただ、上司が悪いというよりは、私自身の「未熟さ」が一番の問題だったことも多いと自覚しています)

実際、役員層を含む上司(Manager)が、従業員エンゲージメントに与える影響は極めて大きく、昨日ご紹介したSTRATIVITYの「従業員エンゲージメント・スコアカード」においても、4大要因(Individual、Manager、Customer、Organization)のひとつとなっていますね。

さて、経営層、マネージャーにとってもっとも重要な能力は、やはり従業員のやる気を高めることができる能力でしょう。

べイン・アンド・カンパニーでは、マネージャーの動機づける能力のことを

「心を奮い立たせるリーダーシップ」

と呼んでいます。

べイン社では、これが具体的にどんなものかをフォロワー、すなわち部下にあたる人々へのインタビュー等を行い、リーダーシップの要石となる32個の要素を抽出しています。

これら32個の要素は大きくは4つに分類されています。以下にご紹介しましょう。

・自己の能力を伸ばす力

自己実現、主体性、ストレス耐性、健全な自己認識、柔軟性、自己感情の客観視、感情を素直に表に出すこと、楽観主義

・周囲と理解し合う力

バイタリティ、謙虚さ、共感する力、耳を傾ける姿勢、主張する力、他人への成長支援、コミュニケーション力、相手との共通点を見出す力

・チームの気風を打ち出す力

多様な視点を受け入れる力、オープンな姿勢、志を伝え共有する力、言行の一致、強い責任感、無私の行動、成果・貢献への評価、ワークライフバランスの尊重

・チームを率いる力

ビジョン、選択と集中、協調性、進むべき方向を指し示す力、信じて任せる姿勢、協業の促進、奉仕型のリーダーシップ、他人の自己実現を助ける姿勢

ずいぶんたくさんの能力が求められるものですね。もちろん、これらのすべてを高水準に持っていこうとする必要はありません。「パーフェクト」を目指すのはそもそも無理ですよね。

むしろ、個々のマネージャーの持つ個性や資質に基づいて、これらのうち3つか4つくらいの能力を高めるように努力することで、十分に従業員の心を奮い立たせることができることがべインの調査でわかっています。

べインによれば、これらの「心を奮い立たせる能力」に加えて、もうひとつ「自身の平静を保つ」という要素が重要とのこと。

なんらかストレスを受けるような状況や非常事態において、マネージャー自身がうろたえてしまうと、そもそも「心を奮い立たせるリーダーシップ」が発揮できなくなってしまうからです。

人は、「厳しい状況においてリーダーがどのように振舞うか」で、リーダーとしての器を図るということもありますよね。

べインは、上に示した32個とこの要素を加えた33個を「心を奮い立たせるリーダーシップ」の核と考えているそうです。

なお、「人を奮い立たせるリーダーシップ」以前に、リーダーには、優れた状況判断力、論理思考力、不確実な状況での決断力が必須であることは言うまでもありません。

*今回の内容は、日経産業新聞のコラム「経営コンサルの現場から」(2014/12/15,16)から引用しています。

関連リンク:

STRATIVITY社が提唱する「従業員エンゲージメント・スコアカード」とは?

 

執筆:松尾順 Certified Net Promoter Expert

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